(参考)時効完成間際の滞納管理費等の扱い (マンション管理サポートネットより抜粋)
時効完成を阻止する必要性
滞納管理費等の消滅時効は5年です。滞納が長期化して一部に支払時期から5年が経過しようとするものがある場合、その部分につき時効完成を阻止して、時効期間を再スタートさせる(これを「時効の中断」といいます)必要があります。
とりわけ滞納管理費等は、仮に滞納組合員が支払えない場合でも、区分所有権が譲渡された場合、買主が特定承継人としてその債務を連帯して負担することになるため(区分所有法8条)、時効を阻止する必要性はより高いものになります。
上記2(滞納の把握と督促)及び3(法的手続への移行とその選択)の方法は、滞納管理費等の回収のための手続きであると同時に、時効完成を阻止し、当該債権を保全するという効果を有するものもあります。当該滞納組合員本人からの実際の回収が困難である場合でも、債権の保全を当面の目的として、一定の手続をとることを検討しておくことも大切です。
催告による方法
時効中断の方法の一つに、催告(文書等による督促)があります。この場合、時効完成前に催告をしたということが重要になることから、「どの滞納管理費等」に係る催告を「いつ」行ったかを明確にするため、配達記録付きの内容証明郵便で行うことが望ましいでしょう。(督促文は書式10を参照して下さい。)
ただし、この催告は、1回だけ、しかも実際上は6ヶ月間だけ時効の成立を遅らせるだけにすぎません。その間に、(3)の方法を採ることが必要です。催告を繰り返しても2回目以降の催告には時効を中断する効力はありませんので注意してください。
より強力な時効中断の方法
訴え(通常訴訟・少額訴訟)の提起
訴訟が係属している間は時効が中断します。そして、勝訴の確定判決や滞納管理費等の支払を認めた和解が成立した場合、改めて10年間の時効がスタートします。ただし訴えの棄却・却下判決があった場合や取り下げの場合には、時効は中断しません。
支払督促の申立て
仮執行宣言付き支払督促に対し異議がない場合には、改めて10年間の時効期間がスタートします。ただし、支払督促に対し2週間以内に滞納組合員等から異議がなされないにもかかわらず、その後30日以内に仮執行宣言の申立てをしない場合には、時効は中断しません。
民事調停の申立て
調停が成立した場合、改めて10年間の時効期間がスタートします。それに対し、調停が成立しなかったり、相手方が出席しなかった場合には、1ヶ月以内に訴訟を提起しなければ時効は中断しません。
④ その他の方法
①~③以外にも、滞納組合員が破産手続き、民事再生手続又は更生手続を
申し立てた場合には、債権届出をして当該手続に参加することによっても時効は中断します。(債権届出の際は書式6を参照して下さい。)
また、債務名義がある場合に強制執行の申立てをすることによっても時効は中断します。これらの場合、改めてスタートする時効期間は5年間となります。
債務の「承認」による方法
滞納組合員が債務を「承認」しても時効は中断し、承認の時点から5年間の時効期間がスタートします。
したがって、催告とあわせ、滞納組合員から「○年○月分の管理費等につき○○円の滞納があることを認める」旨の書面を提出してもらうよう働きかけることも検討すべきでしょう。
また、合意書を取り交わしたり、公正証書を作成した場合も、この債務の承認に該当します。
ちなみに、滞納組合員が支払期限から5年経過後の滞納管理費等についても承認した場合、滞納組合員は時効を主張できず、管理組合は、その部分も含めて法的手続を前提に対応できることになります。
時効中断の方法の選定
以上を踏まえ、支払期限からまもなく5年が経過しようとする滞納管理費等がある場合には、次のような対応が考えられます。
まずは配達証明付きの内容証明郵便で催告(督促)を行います(時効完成はとりあえず6ヶ月先延ばしになります)。
滞納組合員から、滞納管理費等の債務が存在することの確認書的なものを出してもらうよう働きかけます(これにより時効は中断し、改めて5年間の時効期間がスタートします)
③ その上で、3(法的手続への移行とその選択)記載の視点を踏まえ、支払督促や少額訴訟・通常訴訟の提起、民事調停の申立てなどの法的手続を選択します。滞納組合員が②を拒否する場合や、そもそも連絡がつかない場合も同様ですが、この場合、時効の中断が大切ですから、すみやかに手続を選択して対応します。
(1) 執行認諾文言付き公正証書
① どこの公証役場で手続をすればよいか
当事者間が合意すればどこの公証役場でもかまいません。公証役場には双方同席
する必要があるため、双方が利用しやすいところを選択するのが一般的です。
② 作成手数料
支払を合意した金額によって異なります。公証人手数料令により以下のように決められていますが、特別な計算方法やその他の手続費用もあるため、事前に公証役場に確認しておく必要があります。
※双方の依頼に基づき作成する場合
100万円以下 10,000円
100万円を超え200万円以下 14,000円
なお、弁護士等に代理人を依頼する場合には、別途弁護士費用等が発生しますが、その費用は個々の弁護士により異なるため、弁護士に事前に確認する必要があります。
③ 作成依頼の際の手続
特段申立書などの書式は必要とされません。ただし、作成してもらう文書の大略を当事者間で決めておくとともに、本人または代理人であることを証する書面を用意します(管理組合の場合は、管理規約及び現理事長が選任されていることを証する総会議事録など、管理組合法人の場合には、登記事項証明書)
④ 手続の流の概要
ア 1回目
必要書類の確認
↓
公証人面談 作成してもらう文書の大略をもとに嘱託内容の説明等を行う。
とくに執行認諾文言を入れる点を確認。
イ 2回目
公正証書原本の読み聞かせ又は閲覧
↓
双方署名捺印
↓
正本1通、副本1通が交付される。正本を管理組合側が保有する(強制執行手続のため)
(2) 民事調停
① 申立てはどこにするのか
相手方が個人(自然人)の場合には、相手方の住所または居住地を管轄する簡易裁判所に、法人の場合には、主たる事務所または営業所の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。また、管理規約等で訴訟等につき管轄裁判所に関する定めがあれば、その規定に従った管轄裁判所に提起できます。
② 申立手数料
請求する金額によって異なります(別表参照)。申立書に収入印紙を貼って収める方法によります。
また、相手方への送付等のための郵券も納めることになります(具体の枚数等については裁判所窓口で確認します)。
なお、弁護士等に代理人を依頼する場合には、別途弁護士費用等が発生しますが、その費用は個々の弁護士により異なるため、弁護士に事前に確認する必要があります。
③ 申立書の作成(書式2)
申立てに際しては、調停申立書、登記事項証明書(当事者が法人の場合)、不動産登記事項証明書、マンション管理規約の写し、委任状(弁護士に委任する場合)を用意する必要があります。
④ 申立後の手続の流れの概要
ア 裁判所から相手方に調停申立書及び期日呼出状が送達。同時に管理組合にも期日呼出状が送達。
↓
イ 調停期日
通常は申立てから1ヶ月くらい先に期日が指定され、その後も双方の言い分や譲歩の余地を検討するため、何度か期日を重ねられる。
↓
ウ 調停が成立すれば、調停調書が作成される。
↓
エ 任意に履行がなければ強制執行可能
オ 調停が不成立(合意が得られない)の場合には、調停は打ち切りとなる。
↓
カ 訴訟で解決を図る。
(3) 支払督促
① 申立てはどこにするのか
相手方が個人(自然人)の場合には、相手方の住所または居住地を管轄する簡易裁判所に、法人の場合には、主たる事務所または営業所の所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。
したがって、マンション内に居住している者に対しては、マンションの所在地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。それに対し、マンション外に居住している区分所有者の場合には、その者の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てることになります(管理規約等で訴訟等につきマンション所在地を管轄する裁判所にする旨定められていることが多いですが、支払督促の場合には、この規定があっても上記の扱いとなることに注意が必要です)。
② 申立手数料
請求する金額によって異なります(別表参照)。申立書に収入印紙を貼って収める方法によります。また、相手方への送付等のための郵券も納めることになります(具体の枚数等については裁判所窓口で確認します)。
なお、弁護士等に代理人を依頼する場合には、別途弁護士費用等が発生しますが、その費用は個々の弁護士により異なるため、弁護士に事前に確認する必要があります。
③ 申立書の作成(書式3)
申立てに際しては、支払督促申立書、当事者目録、請求の趣旨原因を記載した別紙、商業登記簿謄本(当事者が法人の場合)、不動産登記簿謄本、マンション管理規約の写し、委任状(弁護士に委任する場合)を用意する必要があります。
なお、管理費等の不払いの事実を証明すべき資料を添付する必要はありません。これらの支払事実は、被告側が主張立証責任を負っています。
④ 申立後の手続の流れの概要
ア 裁判所書記官が内容を審査する
↓
イ 裁判所から相手方に支払督促書の送達
↓
ウ 2週間の異議申し立て期間(相手方から異議申し立てがあれば通常訴訟に移行)
↓
エ 支払督促確定
↓
オ 仮執行の申立てをする(書式3-2)。
↓
カ 裁判所から相手方に対し仮執行宣言付支払督促の送達
↓
キ 送達後2週間の異議申し立て期間(相手方から異議申し立てがあれば通常訴訟に移行)
↓
ク 仮執行宣言付支払督促確定
(4) 少額訴訟手続
① 訴えの提起はどこにするのか
相手方が個人(自然人)の場合には、相手方の住所または居住地、またはマンションの所在地を管轄する簡易裁判所に、法人の場合には、主たる事務所または営業所の所在地、またはマンションの所在地を管轄する簡易裁判所に提起します。また、管理規約等で訴訟等につき管轄裁判所に関する定めがあれば、その規定に従った管轄裁判所に提起することができます。
② 訴訟提起費用
訴訟の提起費用は、請求する金額によって異なります(別表参照)。訴状に収入印紙を貼って収める方法によります。
また、相手方への送付等のための郵券も納めることになります(具体の枚数等については裁判所窓口で確認します)。
なお、弁護士等に代理人を依頼する場合には、別途弁護士費用等が発生しますが、その費用は個々の弁護士により異なるため、弁護士に事前に確認する必要があります。
③ 訴状の作成(書式4)
訴状を作成し、マンション管理規約等の証拠書類や付属書類を用意します。なお、「不払い」の事実については必ずしも証拠を添付する必要はありません。管理費等の支払済みであることなどの事実は相手方が主張立証責任を負っています。
④ 訴訟提起後の手続の流れの概要
ア 裁判所が訴状を審査し、形式的に問題があれば補正を求められます。
↓
イ 裁判所から被告に訴状及び期日呼出状が送達。同時に管理組合に対しても期日呼出状が送達。
↓
ウ 期 日
通常は申立てから1ヶ月くらい先に期日が指定され、双方出席のもとで手続が進められます。原則として1回の期日で結審し、その日のうちに判決がなされるか、和解により解決が図られます。
↓ ↓
エ 判 決 和 解(→キへ)
↓
オ 異 議
判決に対し異議がある場合には、同じ裁判所に異議を申し立てることができ、この場合、通常訴訟の手続で審理がなされ、判決や和解によって終了します。この異議審の判決に対しては、控訴などはできません。
↓
カ 判 決 確 定
↓
キ 任意に履行がなければ強制執行可能
貼用印紙額(~200万円) |
|||
請求額(万円) |
調停申立 |
支払督促 |
少額訴訟・通常訴訟 |
万円 |
(円) |
(円) |
(円) |
10 |
500 |
500 |
1,000 |
20 |
1,000 |
1,000 |
2,000 |
30 |
1,500 |
1,500 |
3,000 |
40 |
2,000 |
2,000 |
4,000 |
50 |
2,500 |
2,500 |
5,000 |
|
|
|
|
60 |
3,000 |
3,000 |
6,000 |
70 |
3,500 |
3,500 |
7,000 |
80 |
4,000 |
4,000 |
8,000 |
90 |
4,500 |
4,500 |
9,000 |
100 |
5,000 |
5,000 |
10,000 |
|
|
|
|
120 |
5,500 |
5,500 |
11,000 |
140 |
6,000 |
6,000 |
12,000 |
160 |
6,500 |
6,500 |
13,000 |
180 |
7,000 |
7,000 |
14,000 |
200 |
7,500 |
7,500 |
15,000 |
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